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3DCADだけじゃない!3Dプリンター用形状データの作り方|スキャン・フォトグラメトリ

      2023/06/01

3Dプリントするには、3次元の形状データ(3Dデータ)が必要です。
3DCADや3DCGソフトでモデリングするのが王道ですよね。
でも、3Dプリンターを使いたい人全員が3Dデータを作れるわけではありませんし、そんな人でも3Dプリントを楽しむことが出来ます。

というわけで3Dデータを作ったり準備する方法を、3DCAD/3DCGソフト以外の方法も含めて紹介したいと思います。

3Dプリントに必要なファイル形式と3Dプリントの流れ

予備知識として、3Dプリントに必要なデータを一応確認しておきましょう。

3Dプリントの流れは、ざっくりと下記になります。

  1. 3Dデータの準備
  2. 3Dプリンターに渡すデータの作成
  3. プリント

ここで「1. 3Dデータの準備」について、ですが、3DCADや3DCGソフトでモデリングしたとき、それぞれのソフトのネイティブ形式でまずは保存します。
3DCADのSolidWorksなら「sldprt形式」、3DCGのblenderなら「blend形式」などなど、そのソフト専用のファイル形式です。
後でそのソフトでデータを修正する場合に必要なので、捨てずに残しておきましょう。

そのままでは3Dプリンターにデータを渡すことが出来ないので、、3DCADや3DCGソフトから「STL形式」や「OBJ形式」というフォーマットでエクスポートします。
これらは3次元形状以外の情報を含まないデータで、汎用的なフォーマットです。

3Dプリンターでは「STL形式」、「OBJ形式」が使われることが多く、OBJ形式は色やテクスチャの情報も持てるので、フルカラー3Dプリンターを使うならこちらが向いています。

STL, OBJ形式を直接読める3Dプリンターもありますが、通常はさらに「スライサー」というソフトを使って、3Dプリンターが直接読めるデータを作成します。
FDM形式なら「gcode形式」が多いです。

STL、OBJ形式は単なる形状のデータなので、3Dプリンターのベッド上にどのような姿勢で配置するか、サポートをどのように付けるか、といった情報は持っていません。
スライサーによりこれらのプリント設定を行い、gcode等のデータを作成するというわけです。

まとめると3Dプリントには下記のデータが関係してきます。

  1. 3DCAD/3DCGソフトのネイティブ形式データ
  2. 「STL形式」「OBJ形式」などの3次元形状データ
  3. 「gcode形式」などの3Dプリンターを動かすためのデータ

前置きが長くなりましたが、この記事は3次元形状データの「STL形式」、「OBJ形式」を準備するには?という趣旨になります。

3Dデータを自分で作る場合

3Dデータを3DCADや3DCGソフトのモデリング機能を使うと、思い通りの形状を作成できます。
その他にも、専用の機材を使った「3Dスキャン」や、複数枚の写真から3Dデータを生成する「フォトグラメトリ」という方法もあります。

 

「3DCAD」で3Dデータを作る

3DCADは機械等の設計ツールであり、3次元形状を作りながら設計するためのソフトです。
その性質上、きっちりと決まった寸法のモデルを作成することが得意。

今も昔もプロ向けのソフトは非常に高価ですが、現在では無料で利用できる3DCADも存在します。
無料、有料のソフトをいくつか紹介します。

[無料] FUSION360

FUSION360はAutodesk(オートデスク)社が提供している、個人だと無料で利用できる、本格的な機能を備えた3DCADです。
モデリング機能に関しては、高額な商用3DCADと遜色ない、と個人的に感じます。

本格的に設計やモデリングをしたいならこれを選んでおけば間違いないでしょう。

[無料] FREE CAD

FREE CADはオープンソースで開発されていて、完全無料で利用できます。
永遠のベータ版みたいな感じで、かなり昔から開発が続けられてますが、3DCADとして完成しているとはいい難い印象です。

とはいえ、モデリングに関してはそこそこ使えますので、ライセンスのしがらみなく完全無料で使いたい人には有力な選択肢となるでしょう。

[無料] TINKERCAD(ティンカーキャド)

TINKERCADはWEBベースで動作するオンラインソフトで、インストール不要の3DCADです。
機能的には簡易的なものになると思いますが、インストールとか面倒くさい、したくないって人にはいいんじゃないでしょうか。

ちなみにこれもAutodesk社が提供しています。

[有料] SOLIDWORKS(ソリッドワークス)

有料の3DCADで有名なのも一つ紹介しておきます。
SOLIDWORKSは機械設計向けの3DCADで多くの企業で導入されています。
高額なので個人の趣味で使うようなものではなかったのですが、なんと現在では月額9.99ドル、年額99ドル程度サブスクリプションとして「SOLIDWORKS for Makers」が使えるようになっています。

細かい機能の違いや制限はありますが、ほぼほぼSOLIDWORKSのフル機能が使えます。

「3DCGソフト」で3Dデータを作る

3DCGソフトは、ゲームや映画に使う3Dモデルを作ったり色々するソフトですが、3Dプリンター用の3Dモデルをモデリングすることが出来ます。
人体や動物、キャラクターのような有機的な形状は3DCADの不得意とするところですが、3DCGソフトはそういったものが得意。
用途によって使い分けるとよいでしょう。

[無料] Blender(ブレンダー)

Blenderはオープンソースで開発されている、無料で利用できる統合型3DCGソフトウェアです。
これ一本でモデリングからムービーの作成までこなせますが、3Dプリンターで使うのはモデリング機能のみとなります。
ポリゴンの頂点の一つ一つを編集したり、スカルプティングと言って粘土細工のように変形させて自由な形状を作ることが出来ます。

[無料] MagicaVoxel(マジカボクセル)

通常の3Dモデリングソフトとはかなり毛色が違うのがこのMagicaVoxel
「ボクセルアート」と言って、ドットを置いていって形状を作っていきます。
2Dのドット絵を3Dにした感じです。
OBJ形式でエクスポート可能なので、3Dプリントに利用可能です。

[有料] Maya(マヤ)

映画やゲームの3D製作のデファクトスタンダードと言っても過言ではないのが「Maya」。
3Dプリントのモデリングのために導入するには値が張る上に機能を持て余しすぎますが、3DCGソフトの有名所として紹介してみました。

ちなみのこれもAutodesk社の製品です。
単純に機能面のみ比べると、無料のblenderと大きな違いはないようです。

[有料] ZBrush(ズィーブラシ)

粘土細工や彫刻のように形状を作成する「スカルプティング」から始まった「ZBrush」ですが、機械物(ハードサーフェス)にも対応可能。
廉価版の「ZBrush Core」もあります。

3Dスキャン

3DCADや3DCGソフトで一からデータを作るのも魅力的ですが、3Dプリントデータ作成には3Dスキャンを利用することも出来ます。

ただ、3Dスキャンしたデータを直接3Dプリントに利用出来るほど甘くはなく、デメリットもあります。

  • 3Dスキャナなどの特殊な機材が必要
  • 3Dスキャンしたデータは不完全なため手直しが必要。

3Dスキャナなどの特殊機材が必要なのはもちろん、取得したデータはスキャンのミスにより穴が空いていたり、一部が欠落しているのが常です。
これらを3DCADや3DCGなどのモデリングソフトで修正する必要があります。
そのため、単純な形状だと最初から3DCADで作ったほうが遥かに早かったりします。

じゃあ3Dスキャナのメリットは?と言うと、ある程度複雑な形状の場合、3Dスキャンしたデータをアタリやガイドとして利用する、というのがあります。
いちいち寸法を測定しながらモデリングするより、荒くても大雑把な形状があったほうが圧倒的に時間短縮できます。

フォトグラメトリ

フォトグラメトリは3Dスキャンと似ていますが、こちらはカメラで撮影した複数枚の画像をもとに3Dデータを生成する技術。
100台くらいのカメラが設置された撮影ブースに人が入って、人体まるごと3Dスキャン、みたいなのがありますが、あれはフォトグラメトリの技術が使われています。

Meshroom」などの無料で使えるフォトグラメトリ用アプリケーションもあるので、カメラとPCさえあれば試すことが出来ます。

出力されるのは色付きのデータになるので、フルカラー3Dプリントとも相性が良さそうです。

3Dスキャン同様、一発で3Dプリントに使えるデータを生成するのは難しいですが、建物や地形など巨大なものも原理的には3Dデータ化可能です。

誰かが作ったデータを利用する場合

3Dデータを自分で作るのではなく、誰かが作ったデータをダウンロードして3Dプリントするのも一般的です。
有料無料問わず、様々な3Dデータが販売されていて、3Dプリント向けのみではなく、ゲームや映像制作用の素材として販売されているものも。

3Dプリント向けのデータを提供しているサイトを利用するのが確実ですが、中でも「Thingeverse」が最も有名なのではないでしょうか。

「Thingeverse」ユーザーがアップした3Dデータを無料DL可能!

Thingeverse」は海外のサイトなので、世界中のユーザーから様々な3Dデータがアップロードされています。
フックやペン立てなどの実用品から、3Dプリンターをアップグレードする部品、キャラクターのフィギュアや乗り物の模型など、いろんなものがあり見ていて飽きません。

DLしたデータをプリントして勝手に販売、なんてことをしたらライセンス的にNGと思いますが、個人で楽しむ分には自由に利用出来ます。

誰かにデータ作成を依頼する

自分で作成するスキルがなかったり、作る時間がなかったり、既存のデータじゃ役不足な場合は、誰かに3Dデータ作成を依頼するという手も。

企業対企業の取引としてデータ作成を依頼する場合、例えば機械設計事務所などで対応可能な場合があります。
機械設計事務所は普段の業務で3DCADを使っていますので、数や金額の条件次第で請け負ってもらえるでしょう。

ココナラやランサーズなどのクラウドソーシングサービスを利用すれば、3Dデータ作成が得意な個人に依頼することが出来ます。

私も3Dデータの作成は可能なので、当ブログの問い合わせフォームから連絡をいただければ対応可能です。
料金は… 決めてないですが格安でお請けします。

まとめ

というわけでまとめると、3Dプリンターで使う3D形状データを準備するには次の方法があります。

  • 3Dデータを自分で作る場合
  • 誰かが作ったデータを利用する
  • 誰かにデータ作成を依頼する

自分のスキルや状況に応じて、最適な方法を選択できたらいいですね。

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