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【3Dプリンター】エンクロージャー有無の違いと効果・役割について

   

 

安価な3Dプリンター(特に熱溶解積層方式(FDM)には箱状の筐体、「エンクロージャー」がなく、機械がむき出しになっているものが多いです。

3Dプリンターのエンクロージャーはあったほうが良いのか?
エンクロージャーのメリット、デメリットは?
エンクロージャーのない3Dプリンターを使っている場合、後付で追加する方法などを解説したいと思います。

3Dプリンターエンクロージャーとは?

エンクロージャーという言葉は「囲い込むもの」という意味があるようです。
「エンクロージャー」といえば、スピーカーの箱の部分を指す言葉としてよく使われます。
外装、筐体、ケースなどと呼ぶこともありますね。

今回は特に熱溶解積層方式(FDM)の3Dプリンターのエンクロージャーに付いての話題となりますが、例えばエンクロージャーのある3Dプリンターと言えばこんなのですね↓

一方、エンクロージャーのないオープンフレームと呼ばれるのはこんなの↓

機械が箱に収まっているか、剥き出しかの違いです。
中に入っている機械の構造に大きな違いはありません。

エンクロージャーのメリット

3Dプリンターのエンクロージャーは、ざっと思いつくだけで以下のような役割や効果があります。

  • プリント品質の向上
  • 騒音などの環境の改善
  • 高温部や可動部の安全性の改善
  • 有害物質飛散による健康被害対策

一つずつ見ていきましょう。

プリント品質の向上

エンクロージャーは、3Dプリンターの内部温度を一定に保つことで、印刷品質を向上させます。
特にABSやPETGなどの高温フィラメントでは、温度差による収縮やワーピング(反り)を防ぐことができます。
また、エンクロージャーは外部からの風やほこりなどの影響を遮断することで、印刷精度や表面仕上げも改善します

騒音などの環境の改善

3Dプリンターがエンクロージャーで囲まれている事により、ステッピングモーターや冷却用ファンの音が軽減されます。
離れた部屋で稼動している場合は気になりませんが、自分のすぐとなりで3Dプリンターが動いていたら結構うるさいですからね。

高温部や可動部の安全性の改善

3Dプリンターはノズルが200度以上の高温になりますし、ベッドやノズルが目まぐるしく動きます。
うっかり触れてしまうと火傷したり、駆動用ベルトに指や髪の毛が挟まれたりするかもしれません。

気をつけていればどうってことはないですが、小さい子供やペットが居る場所では、危なくて使えませんよね。

エンクロージャーがあれば、危険部位にうっかり触れてしまう危険性がぐっと低くなり、安全性が高まります。

有害物質飛散による健康被害対策

FDM方式の3Dプリンターは、高温のノズルで樹脂材料(フィラメント)を溶かしながら造形します。
その時に少なからず人体に有害な物質が発生するとか。

エンクロージャーがあれば完全に防げるわけではないと思いますが、部屋の中に広く飛散するのは抑制できます。

エンクロージャーのデメリットはサイズが大きくなること

3Dプリンターのエンクロージャーのデメリットはなんでしょうか?
エンクロージャーがあることで3Dプリンターのサイズが大きくなることがデメリットと言えます。

エンクロージャーのないオープンフレームの3Dプリンター(Ender3など)を見てみると、パッと見はそんなにサイズが大きいと感じません。
でも実際に稼働させてみると、テーブル(Y軸)が前後に大きく動き、見た目以上に設置スペースが必要なことがわかります。

ということは、この3Dプリンターをエンクロージャーに収めようとすると、テーブルの可動範囲を全てカバーできるサイズが必要ということです。

Ender3のように造形サイズが220×220×250mmクラスの3Dプリンターだと、エンクロージャーのサイズは最低でも1辺 50cm以上となり、かなりの存在感を醸し出します。

エンクロージャー付きの3Dプリンター紹介

10万円を超える3Dプリンターはエンクロージャーありの場合が多く、紹介しても面白くないので、10万円未満の比較的安価な機種でいくつか紹介します。
同じ程度のスペックのエンクロージャー無しと比べると、どうしても高くなります。
これから買おうとしてる人はエンクロージャーあり、なしは予算と相談ですね。

造形サイズが大きい!X-PlusⅡ (QIDI TECH)

造形サイズ 270 mm×200 mm×200mm
価格 8万円台

エンクロージャー付きの機種は造形サイズが小さくなりがちですが、X-Plus Ⅱは10万円以下では、比較的大きな造形サイズを誇ります。

フィラメント切れを検知するセンサーも搭載。
材料切れでのプリント失敗を防げます。

見守りカメラでスマホからチェック可能!Sermoon V1 Pro (Creality 3D)

造形サイズ 175 mm×175 mm×165mm
価格 6万円台

Sermoon V1 Proは「見守りカメラ」を搭載していて、スマホから造形の様子をチェックできます。
ベッドの高さを自動で調整するオートレベリング機能も付いています。

とにかく安い!3DCARV(Aning)

造形サイズ 80 mm×80 mm×80mm
価格 1万円台

3DCARVは1万円台で買える低価格が魅力です。
ただし、造形可能なサイズは8cm四方と少し控えめ。
3Dプリンターとはどんなものか試してみたい人にはいいかもしれません。

エンクロージャーなしの3Dプリンターの場合は自作または市販品で対応可能

すでに3Dプリンターを所有しているけれど、エンクロージャーのない機種の場合は、自作したり市販品で対応することが出来ます。
要はなにかで囲いを作ればいいので。

私も過去にエンクロージャーを作ったことがありました。
写真がなぜか見つからないですが、アルミフレームの上から余っていたビニールシートで覆ったという貧乏仕様。
効果があるのか不明だったので、現在は撤去してしまいました。
フィラメントはエンクロージャーの外に設置する構造で、ビニールシートの穴から内部に供給してたと思います。

サイズとしては幅 450 mm × 奥行き 530 mm × 高さ500 mmです。

自作や市販エンクロージャーの問題点は、3Dプリンターをすっぽり囲いの中に入れてしまうので、制御基板や電源部など温度が上がって欲しくない部分まで保温してしまうことです。
可能であれば、制御基板や電源部はエンクロージャーの外に出してあげたいですね。

自作の場合、極力隙間がないように作るのも大事です。
少しでも隙間があると音が漏れますし、すきま風で保温力も低下してしまいます。

市販の後付エンクロージャー(カバー)の選び方

市販の後付エンクロージャーも販売されていて、手持ちの3Dプリンターを手軽にエンクロージャーありに改造できます。

選ぶときの注意点として一番重要なのがサイズ。
特に、可動部が動いたときでも3Dプリンターがきちんと収まるサイズを購入しましょう。

市販の後付エンクロージャーはパイプの骨組みに布製のカバーを被せる構造なので、防音性はあまり期待できません。
エンクロージャーと言うよりカバー的な感じで、主に埃よけや保温の目的と考えたほうが良さそうです。

おすすめの後付エンクロージャー(カバー)

現在実際に購入可能な後付エンクロージャーをいくつか紹介します。
と言っても、どれも似たりよったりですね。

約9,000円 幅550mm × 奥行650mm × 高さ750mm

骨組みはグラスファイバーロッド製だそうです。
サイズ 幅550mm × 奥行650mm × 高さ750mm

約17,000円 PeachClover (Creality 3D) 幅480mm × 奥行600mm × 高さ720mm

3Dプリンター Ender3シリーズを販売しているCreality 3Dの純正エンクロージャーです。
Creality 3D製の3Dプリンターじゃなくても、サイズが合えば何にでも使えます。

約7,000円 幅480mm × 奥行600mm × 高さ730mm

Creality 3Dの純正と比べて半値以下という安さ。
サイズや機能はあまり変わらないと思います。

まとめ

3Dプリンターのエンクロージャーの役割や、3Dプリンター本体、市販の後付けエンクロージャーの紹介をしてみました。
PLAしかプリントしないのであれば、エンクロージャーはあってもなくても大丈夫かもしれませんが、ABSなどをプリントするとなると必要になってきます。
予算と設置スペースがあれば、ぜひ検討してみてください。

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