カワハラの、雑多な記録。

【FDM 3Dプリンター】丸穴内部にサポート材が付かない形状のアイデア

   

FDM方式(熱溶融積層方式)の3Dプリンタを使っていて、何が一番面倒くさいかというと、プリント後の「サポートの除去」ですよね。
特に形状によっては「これ、どう頑張っても取るの無理じゃない?」という状況に陥ることも。

今回、横方向の丸穴に対して、モデル形状を最適化するアプローチによりサポート除去作業を省力化するアイデアを紹介したいと思います。

問題点: 横方向の丸穴は内側にサポートが付いて除去が大変

穴を縦方向に向ければ、穴の内側にサポートは付きませんが、穴を横方向にしたらサポートが付いてしまいます。
穴のサポートのみに着目すれば、穴を縦向きにすればよいですが、その他の影響により横方向にしなければいけないことも多々あります。

穴が短いとサポート除去もそんなに苦労しませんが、穴が長いと除去が不可能な場合も。
例えば、Φ5、長さ200mmの穴の内側についたサポートを除去できますか?
かなり難しいですよね。

天井側を60度位の斜めにすればサポートがつかない。

FDM方式の3Dプリンターはある程度のオーバーハングはサポートなしで造形することが出来ます。
個人的な経験上は、材料がPLAなら60度くらいなら問題なく造形できると考えています。

つまり、丸穴の天井側を60度程度の斜め形状にすれば、長い穴でもサポートなしで造形できるということです。

CURA等のスライサでは、何度以上のオーバーハングでサポートを付けるか設定可能です。
この場合は「60度以下のオーバーハングはサポートを付けない」という設定をしておきます。

丸穴の天井側を60度程度の斜め形状にすると、一見すると丸穴とそんなに違いはないですよね。
機能的に問題なければ、このように形状を工夫することでサポートを付けずにプリントが可能となり、サポート除去の手間を省くことが出来ます。

出入り口だけ丸穴にするのも有効

応用として、穴の出入り口付近のみ丸穴にして、内部の見えない部分の天井のみ斜めにする案もあります。

出入り口付近のみサポートが付きますが、この程度ならサポート除去もなんとかなるでしょう。
見た目にも通常の丸穴と違いがありません。

小さい穴の場合スライサで無理やりサポートを付かない設定にする方法も

10mm以下の小さい穴の場合は、わざわざ天井を斜めにしなくてもサポートなしでプリント出来る可能性があります。

サポートを付けないようにするには、モデル全体をサポートなしの設定にすることも出来ますが、穴以外の部分がプリント出来なくなるかもしれません。
そんなとき、スライサ「Cura」では指定の場所のみサポートを付けない「サポートブロッカー」機能が使えます。

使い方は「サポートブロッカー」をクリックして3Dビューのモデルの適当な箇所をクリック。

半透明な立方体が出来て、ここにはサポートがつかなくなります。
立方体はモデルと同じ手順で移動、回転、拡大縮小が出来るので、必要な場所に配置します。

モデルごと斜めにする荒業

その他の方法として、モデルごと斜めにしてしまうことで、サポートを最小限に出来る場合があります。

3Dプリンターのベッドとの接地面性が小さくなるので、プリント失敗の危険性が少し上がってしまいますが、状況によっては有効です。

丸穴内部のサポート問題に限らず、例えば細い丸棒を真上に向けてプリントするより、斜めにプリントしたほうが強度的に有利となることも。
FDM方式の3Dプリンターは層と層の間が剥がれやすいですが、斜めにすることで層同士の接着面積が増えるため、折れにくくなります。

天井を斜めにするのは丸穴に限らず有効

次の画像では、左側の物体はサポートが付いていますが、右側は付いていません。

右側はオーバーハング面が60度の斜めになっているためサポートなしで造形可能です。
本来欲しい形状が左だったとしても、機能的には右側の形状でも問題ない、ってケースは割とあると思います。
そんなときは、3Dプリントに特化した設計として、右の形状に設計を変更するのも有効です。

サポート除去の手間も減りますし、サポートが付いていた面は荒れて汚くなりがちです。
斜めにして最初からサポートがつかないようにしたほうが、仕上がりの見た目にも美しくなります。

まとめ

形状や配置の工夫次第で、サポートを極力減らすことは可能です。
現実的な判断としては、設計を修正するのがめんどいので、サポート除去の手間を取る、と言う選択をすることも多いですが…

同じ形状を何個もプリントする、という場合はかなり有効になってくるんじゃないでしょうか。

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