3Dプリンタと軸流ファンで作る塗装ブース(後編) – 自作塗装ブースが完成 –
前回までで、使用予定のファンと塗装ブースサイズより、必要な風速は稼げそうだということがわかりました。
いよいよ、塗装ブースが完成し、試運転です。
果たしてうまくいくのでしょうか?
この記事の目次
吸い込み式自作塗装ブースが完成
早速完成しちゃってますが、こんな感じで出来上がりました。
最初に3Dプリンターで作った部材を極力流用することで、そんなに手間をかけていません。
新たに作った部品として、ブース側には3Dプリンターで作ったホースのコネクタをネジで固定し、使わないときは外せるようにしています。
ダンボールとの隙間から空気が漏れないように、ウレタンゴムスポンジを挟んでいます。
ファン部は押出式として作ったときのままですが、中のファンの向きを変えて吸い込みと吐き出しの方向を逆にしています。
ネロ式っぽく仕切り板としてダンボールの蓋の一枚を折り返す構造にしてみました。
下の画像では真下に仕切り板が垂れてますが、もっと斜めに角度をつけて固定します。
しかし、この仕切り板の有無で対して変わらないっぽかったので、最終的にはただの箱型にしています。
吸い込み具合を評価する手立てがないので、ブースの開口部に細くちぎったティッシュをつけて風速を見える化してみました。
ティッシュが何mmなびいているかで風速をざっくり計測。
ピンクのプチプチは、ダンボールの上面を折り返して仕切り板にしたので、上面を塞ぐために貼っています。
一応押出式と吸い込み式を比べてみましたが、風速はあんまり変わらない、と言うかこの計測方法では「一応吸ってそう」以上のことが分からなかったので、予定通り吸い込み式にしました。
使用して性能に問題ないことが確認できた
作った塗装ブースをセッティングして実際に使ってみます。
窓にシャッターがついているので、ファンの排出口を窓から出してシャッターを下ろし、窓を閉めることで固定しています。
伸縮できるホースは2mまで伸ばせますが、デスクが窓際にあるため一番縮めた状態でもちょっと長いくらい。
1mもあれば足りそうでした。
照明がないと暗くて塗装対象がよく見えないため、必須です。
クリップライトを付けました。
わたしは左手でエアブラシを持つため、右側にライトを取り付け。
ブース内を光が反射するのか、とても見やすいです。
匂いの強いラッカー系の塗料をエアブラシを吹いてみましたが、匂いの漏れは全くなし!
匂いが部屋に漂わないためには、調色や希釈も塗装ブース内で行うと良いです。
塗装後の乾燥もできれば塗装ブース内で行いたいですが、そうすると置く場所がだんだんなくなってきてしまいます。
エアブラシより噴射力が強いスプレー缶も吹いてみましたが、問題なし!
スプレーを部屋の中でぶっ放す日が来るとは夢にも思っていませんでした。
ダンボールの上面を折り返してネロブースの仕切り板っぽくしていましたが、ほとんど意味がないことに気がして、結局ブースはただの箱型となる。
塗装時に臭くない、といういちばん重要な性能については問題なく満たしています。
見た目がみすぼらしい以外はおおむね満足できる出来となりました。
音量レベルは許容範囲内
性能に満足しても音が大きすぎて使用をためらってしまっては意味がないですよね。
今回作った塗装ブースの騒音レベルは許容範囲内でした。
ファン単体で46 dBなので、一般的に50dBで「静かな事務所のなか」と言われているので、そんなに大きな音ではありません。
タミヤのエアブラシの音と同じくらいか、それ以下です。
部屋のドアを締めて廊下に出ればほとんど聞こえません。
作って見えてきた問題点
実際に作ってみたからこそ見える問題点ももちろんあります。
虫が入ってくる
最大の問題点は虫が入ってくることでした。
ファン部を窓に置いてシャッターを下ろし、窓を閉めるという方法で固定しています。
ぱっと見では隙間がなさそうですが、実際はガラス窓とシャッターの間は数cm開いていて、外から虫が入り放題です。
特に夏は窓から漏れた光に虫が寄ってきます。
さらに家の裏に保育園の木が生えていて、普段から虫が多い環境です。
網戸越しに排気すれば虫問題は解決ですが、網戸が汚れるんじゃないか?ってことでそこまでは踏み切れていません。
工作して窓にファンを直接固定できればベストですが、使わない時に片付けられなくなるし、塗装しないときは邪魔ですね。
ブースが小さい
使ったダンボールのサイズが幅350mm、高さ280mmしかないのでちょっと狭い。
ネロブースの500 × 500というサイズはさぞ快適だろうなと思いました。
ブースサイズは幅に目が行きがちですが、高さも結構重要です。
筆塗りする時に、高さが低いためブースの天井に筆のお尻が当たって使いにくい場面がありました。
ブースサイズを変えたときの風速を計算し、どれだけ大きく出来るかを検討する必要があります。
もうちょっと大きくしても風速的には大丈夫なはず。
最悪ファンを2つにすれば問題なしでしょう。
見た目がみすぼらしい。
ブースはダンボールなので、みすぼらしい見た目なのは仕方のないところ。
別に見た目にこだわって作ったわけじゃなく、汚れたら交換出来るのでこれはこれで良いんですが。
ただ、ダンボールはある程度頑丈なのを使ったほうが良いです。
ダンボールが弱いと、天面に取り付けたダクトホースの重みでひしゃげてきてしまいます。
ダンボールには3mm厚のBフルート、5mm厚のAフルート、AとBを重ねて8mm厚にしたWフルートなどがあります。
最低でも5mmのAフルートを使いたいところです。
畳んでコンパクトにできない
排気効率を上げるため、ダンボール箱に隙間が出来ないように透明テープを貼りまくっています。
そのため「使わないときは畳んで保管する、ということは出来ません。
片付けるときに箱(ブース)内にファンやダクトホースを入れればちょっとはましかな。
ファンがどの程度汚れるのだろうか?
フィルターの類は一切つけていません。
吸い込まれた塗料を含むミストは直接ファンに吸い込まれていきます。
どの程度ファンが汚れ、その汚れが寿命や性能にどの程度影響を与えるのか、予想出来ません。
ファンは汎用的なものなので、交換してしまえばそれまでですが、すぐに壊れたら困りますね。
まとめ
一応満足のいく性能の塗装ブースが作れて良かったです。
塗装ブースを使って塗装することよりも、塗装ブースをあれこれ考えるほうがだんだん楽しくなっていました。
手段と目的が入れ替わる、よくあるケースですね。