カワハラの、雑多な記録。

赤軸,青軸,茶軸,黒軸,静電容量式キーボードに初めて触った人間の感想

   

最近ロジクールのK840と言うメカニカル方式のキーボードを使いだして、高級キーボードの世界が気になり始めてしまいました。
キーボードについて調べると、みんな当たり前のように「赤軸」とか「黒軸」とか言うワードを使っています。
最初は意味不明でしたが、調べるとなんとなく分かってきて、「これは実際に触ってみなければ!」と思い、現物に触れてきました。

というわけで、「赤軸」とか「静電容量無接点方式」とかのキーボードに始めて触れた私がどう感じたのかを書きたいと思います。

「赤軸」,「青軸」,「茶軸」,「黒軸」,「静電容量無接点方式」とは?

メカニカルキーボードについて情報収集していると、必ず「赤軸」とか「青軸」とかいうキーワードに出くわします。
なんの暗号だろう?と思っていましたが、どうもCherry社が作っているスイッチの通称みたいです。

この「Cherry MXスイッチ」がメカニカルキーボードの世界ではデファクトスタンダードな存在で、どうもこれ抜きには語れなさそうです。
ちなみに私が買って満足しているキーボードはCherry製ではなく、LogicoolとOmronが共同開発した「Romer-G」スイッチというもの。

つまり、Cherry MXスイッチが世界的にも有名ですが、それ以外にもメカニカルキーボードのスイッチは一応存在するということですね。
昔はアルプス製のスイッチのメカニカルキーボードもあったらしいです。
スイッチメーカーとしては現在もアルプスは一流ですが、キーボード用は今はやってないんですかね。

Cherry MXスイッチのキーボードのキートップを外すとスイッチが見えるんですが、スイッチ中央にある可動部(軸)の色が赤だったり青だったりします。
それでみんな「赤軸」とか「青軸」とか呼んでいるみたいです。

各色によって、押した時の感触や音が異なり、それぞれの好みに合わせてチョイスできるというわけです。
特性により色を変えるなんて、なんともキャッチーで分かりやすい。

メカニカル方式のキーボードの価格帯は1万円~ と言ったところです。
Cherry MXスイッチではない、私が愛用しているロジクール K840は8,000円位で買えます。

メカニカル式のキーボードの中に「赤軸」とか「青軸」とかの種類があるわけですが、「静電容量無接点方式」はメカニカルとは全く違う仕組みです。
メカニカルのように物理的な電気接点があるわけではなく、なんだか小難しそうな技術を使っています。

静電容量無接点方式のキーボードは東プレと言う会社が作っている「Realforce(リアルフォース)」と言う機種が有名。
と言うか、静電容量無接点方式といえば東プレ以外はほとんど作ってないのが実情のようです。
HHKBとか韓国のLEOPOLDも静電容量無接点方式のキーボードですが、中身は東プレ製。 最近になって、ようやく中国製のちょっと安価な静電容量式が出たりしてるみたいですが。(ただし、英字配列しかない)

東プレの価格は18,000円~ と言った感じ。
中国製のは12,000円~ くらいです。

各方式のキーボードを初めて触った感想

私はLogicoolのK840を最近使い始めたくらいで、高級キーボードの経験はそれほど長くありません。
今回、大阪のヨドバシ梅田にたまたま行く機会があったので実機を触ることが出来たわけですが、各軸のざっくりした特徴とか静電容量無接点方式とは何か?と言う予備知識はある程度調べていきました。

さて、人生で初めて赤軸とか静電容量無接点とかのキーボードを触った感想を、わかりやすく表にまとめたのがこちらです。

種類 押下荷重(g) クリック感 感想
メカニカル 赤軸 45 なし スコスコ
メカニカル 茶軸 55 あり 普通
メカニカル 青軸 60 激しくあり ガチャガチャ
メカニカル 黒軸 60 なし ブニョ
静電容量無接点 30,45,55 わずかにあり スコスコ

一つずつ詳しく見ていきましょう。

スコスコ感がやみつきになる「赤軸」

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出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-red.html

赤軸はCherry MXスイッチの中で赤軸が一番小さい力でタイピングする事ができ、「スコスコ」した感触です。
高速で文章を入力する、という用途に向いていると思います。

キーを押すと、変な抵抗なくスッと落ちていく感じで、メカニカルタイプのキーボードの中では個人的に一番気に入りました。
どうも、力を入れずにタイピングできるのが私の好みのようです。

荷重曲線を見ると、キーを押す荷重(force)とキーを押す距離(travel)が直線になっていますが、押す力に応じて素直にキーが沈んでいくことを意味しています。
キーを押すと30gくらいで沈み始め、約45gでキー入力として反応します。(Operating position)
明確なクリック感はないため、感覚だけではどこでONになったのかは分かりません。

余談ですが、グラフでは荷重の単位がcN(センチニュートン)となっていますが、SI単位系と言って機械設計とかの現場ではg(グラム)ではなくN(ニュートン)を単位として使うのが正式です。
ざっくり、1N = 100g, 1cN = 1gと考えておけば問題ありません。
Nはあまり馴染みがない人も多いと思うので、この記事ではgで書いています。

店で触ったときはもちろんんPCに繋がっているわけでもなく、実際にタイピングした時にはまた違った印象になるかもしれませんが、私がCherry MXスイッチのキーボードを買うときはこれにするでしょう。
今使っているロジクール K840は赤軸に似てるように思います。

赤軸を搭載した製品はこんなのがあります。

指先と耳に訴えてくる「青軸」

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cherrymx-blue-chart

出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-blue.html

青軸は、他の軸と比べると全く違います。
なんというか、「ザ、メカニカル!」って感じです。
ガチッ!と言う凄まじいクリック感がが指先に伝わってきて、耳にもしっかりと「ガチッ!」と言う音が聞こえます。
目と耳で楽しむ、それが「青軸」。

高速でタイピングするとはっきり言ってガチャガチャうるさいです。
非常に静かなオフィスで使うと、かなり響き渡るんじゃないでしょうか。
夜中に使っていると、隣の部屋にも聞こえてしまうかもしれません。

そういう意味では使う人を選びますね。
多少音が出ても問題ない人、環境でしか使えません。

「ガチャガチャ」感がすごいですが、キーがすごく重いわけではありません。
荷重曲線を見て分かる通り、最大で60gほど。
赤軸の45gよりは重いですが、一般的なメンブレンと同じくらいの値かと思います。

しっかりとした「押した感」があるため、正確なキー入力が必要なゲーム用に使っている人も多いんだとか。
このガチャガチャ感が癖になりそうで、ちょっとだけ使ってみたいですね。
常用はしたくないけど。

青軸を搭載した製品はこんなのがあります。

わりと普通な「茶軸」

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cherrymx-brown-chart

出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-brown.html

茶軸はなんかよく分からないんですよ。
クリック感はあるらしいんですが、青軸程ハードではないので、それほど感じません。
青軸の後に茶軸を触ったので、青軸の強烈なインパクトに埋もれてクリック感が分からなかったのかもしれません。

全体的な印象は「赤軸をちょっと重くしてみました」みたいな感じでしょうか。
茶軸のほうが歴史が長いので実際は「茶軸を軽くして赤軸を作りました」の方が正しいんでしょうけど。

荷重曲線を見ると1mmを超えたあたりで55gの荷重となり、その後荷重が40gほどまで減ります。
これが「クリック感」を感じる要因ですね。
安物のメンブレンを含め、だいたいのキーボードがこのような曲線を描きますが、赤軸はこのグラフに山がなくリニア(直線的)なためクリック感がないことが分かります。

これといった特徴がない(私が分からなかっただけですが)ということは、茶軸はバランスが取れた万能選手ということかもしれません。
操作力も軽すぎず重すぎず、ソフトなクリック感があり、誰でも違和感なく使えます。
歴史も長いので、愛用者も多いみたいですね

私が今使っているキーボード Logicool K840のスイッチ「Romer-G」は茶軸のフィーリングを参考に作られたそうです。
でも私的には赤軸に似てるかなと感じます。
というのも、Romer-Gの操作力は45gですが、茶軸は55g。
一方、赤軸は45gなのでRomer-Gと同じです。
そのため、Romer-G搭載のK840の「軽い操作感」が赤軸に似てると感じたのかもしれません。

茶軸を搭載した製品はこんなのがあります。

ただ重いだけじゃない独特な「黒軸」

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出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-silent-black.html

黒軸はなかなか独特です。
一般的に出回っているCherry MXスイッチの中で一番重いということで有名ですが、ただ単に重いというわけではありません。

感覚的にはブニョ言う感じでしょうか。
言葉にするのが難しいですが、嫌な感じではありません。
ガムを噛むような、独特な感触です。
人によってはこれが癖になるんだろうなと想像できます。

荷重の特性を見ての通り、ONになる荷重は60gとかなり重めです。
しかしグラフの左の方を見てみると、30gあたりからキーが沈み始めます。
これは赤軸と同じです。
そして、赤軸同様に荷重と距離が直線的に比例して増加していき、60gでONとなります。
赤軸のグラフと見比べると分かりますが、赤軸と黒軸は傾きが違うだけで同じような特性ということが分かりますね。

クリック感がないので、似たような荷重でONになる茶軸やメンブレンともまた違ったフィーリングです。

赤軸では軽すぎて意図しない入力が発生してしまう人や、しっかりとしたタイプ感を求めている人には黒軸が最適かもしれません。
噛めば噛むほど味が出る、スルメみたいな可能性を感じました。

黒軸を搭載した製品はこんなのがあります。

キーボードの最高峰「静電容量無接点方式」

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出典: http://www.topre.co.jp/products/elec/keyboards/features.html

私が今一番気になっているのがこの静電容量無接点方式の押下力30gです。
ロジクール K840の軽いタッチ(45g)は気に入っていますが、それよりさらに15gも軽い30gのキーボードだと更に異次元の打ち心地かもしれません。

というわけで初めて触ってみた感想は、抵抗なくスコスコ打ててすごく良さそう!でした。
とにかく軽いです。
これなら何時間タイピングしても疲れないに違いありません。

でも普段メンブレンで満足している人が、お店に来てちょっと触ったくらいではこの良さが分からないかもしれません。
「軽いのは分かるけど、それがなにか?」と言って感じで。

タッチの軽いキーボードががどれほど指の披露を軽減してくれるか、実際に使ってみないと分からないでしょう。
私も店先でちょっと触ったくらいなので、実際に長文を入力したらまた違った印象になるかもしれません。
是非使ってみたい。

お店で触ったのは東プレのRealforceですが、この製品のラインアップには30g, 45g, 55g, 指によって重さを変えている変荷重があります。
上の荷重のグラフは多分45gのもの。
曲線から読み取れる通り、多少のクリック感があります。

東プレと言えば「変荷重」と言うイメージも強いですが、変荷重のキーボードは小指や薬指など力の弱い指が担当するキーは30g等軽めのタッチになっています。
逆に人差し指や中指は力が強いので重めにし、誤タッチを防ぐ設計になっています。

静電容量無接点方式の製品はこんなのがあります。

メカニカル方式の構造

キーボードのことを更に深く知るためにCherry MXスイッチの構造も調べました。
もちろんこんなこと知らなくても、キーボードを使う上では全く問題はありません。

img-productstage-mxBrown@2x-368x368

出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-brown.html

スイッチ単体の外観はこんな感じです。

img-explosion-mxred@2x-678x1250

出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-red.html

分解したらこんな感じ。
上下の筐体に、コイルスプリング、赤い可動部、接点2個、6部品で構成されていてわりとシンプルですね。

CMX2_1

出典: https://www.diatec.co.jp/products/CHERRY/

このCherry MXスイッチと、キーボードの筐体、基板、キートップを組み立てた状態の断面図がこれ。
この図で「鉄板」と書いているのが筐体ですが、上からはめ込んで、基板の裏面から出たリード(接点)を半田付けする構造になっている模様。
この構造からいくと、基板裏の半田付けを外して、上に引っこ抜けばスイッチの交換が出来るはずです。多分。
スイッチの種類(PCB Mounting Pinsあり)によっては鉄板の筐体を用いずに、基板へのはんだ付けのみで取り付けることも可能みたいです。

あと、スイッチが動作する様子としてこの画像がめちゃくちゃ分かりやすいです!

Cherry MX Brown Switch - Animated GIF_MXBlue_v001 (1)_s

出典: https://www.cherrymx.de/en/products/mx-brown.html

この画像は茶軸ですが、内部でどのように部品が動いているかやソフトなクリック感がどのように生まれているかがよく分かります。
接点の一部を茶色の可動部(ステム)の突起に引っ掛けるようにしてクリック感を表現しているわけですね。なるほど。

Cherryのサイトを訪れれば、他にも赤軸、青軸、黒軸、静音赤軸、静音黒軸、銀軸の内部構造の動く画像や荷重特性のグラフを見ることが出来ます。
赤軸は接点と可動部の引っかかりがなく、クリック感を出さないようにしていたり、青軸は更に1部品追加して独特なクリック感を表現していたりと、いろいろ分かります。

また、メカニカルスイッチ式のキーボードは、キーの一つ一つにこれらのスイッチが入っていると言う構成になっています。
メンブレンや静電容量無接点方式等、他の種類のキーボードと比べるとある意味構造が一番想像しやすいですね。

Cherry MXスイッチの種類

Cherry MXスイッチって種類がいっぱいありますよね。
一般的な茶軸、赤軸、青軸、黒軸の他にも静音タイプや銀軸、緑、灰色、透明なんかもあるみたいです。
そんなたくさん種類があるCherry MXスイッチの全体像は下の画像を見れば一発で分かります。
Cherry MXスイッチの型番と、その型番がどのような仕様を表すかと言う図ですが、特に電子部品のデータシートとか見慣れている人はこれ見るだけでだいたい理解できると思います。

20171023_CHERRYMX_NummernschluesselEN

出典: https://www.cherrymx.de/en/dev.html

特に重要なのが6文字目。
1~4, A~Lの文字が入りますが、赤軸なら「L」、茶軸なら「G」ということが分かります。
3文字目が「3」の場合は静音タイプ、「1」の場合は標準。

最後の文字はハウジングそこにピンがあるかないか。
ピンありの場合は基板へのはんだ付けのみで、金属製の筐体を用いずに使用可能みたいです。

それぞれの組み合わせを考えると、Cherry MXスイッチはかなり膨大な種類になります。
もちろんすべての種類が流通しているわけではないと思いますが。

静電容量無接点方式の構造

img_key_point_01_seiden

出典: http://www.topre.co.jp/products/elec/keyboards/features.html

静電容量無接点方式は、 メンブレン方式と同じく、ラバーのドームが入っています。
静電容量無接点方式のキーをタイプしたときのフィーリングを主に決定するのがこのドームとのこと。
ラバードームの他にも円錐型の金属スプリングも入っています。
このスプリングがどういう役割なのか分かりませんが、キートップとドームを支える補助的なものなんですかね。

img_key_point_02

出典: http://www.topre.co.jp/products/elec/keyboards/features.html

メンブレン式は上の画像になりますが、ドーム中央の突起でメンブレンシートを押すことでスイッチONとなります。
突起とメンブレンシートが物理的に接触する必要があるので、キーを底まで押し込まないと入力ができません。
この辺が、メンブレン式のフィーリングを悪くしている原因のようです。

「静電容量“無接点”方式」はその名の通り、金属電極による接点がありません。
接点は繰り返しON/OFFすることで劣化しますが、静電容量無接点方式では仕組み上は接点の劣化はありません。
ラバードームやスプリングの劣化はあるかもしれませんが、10年以上は普通に使えるようです。
メンブレン式やメカニカル式は物理的な金属接点が劣化して接触不良がいずれ発生します。
メカニカル式はスイッチ一つ一つが独立しているので、個別に交換可能ですが(そこまでするなら新しいキーボードを買うかもしれませんが)、メンブレンは全部つながっているので不良が1キーだけでも全交換が必要です。

まとめ

今回始めて各軸、静電式を触って私が次に買うとしたら、静電容量無接点方式の荷重30gかな、と思っています。
いかんせん高いのがネックですが、

会社でメカニカルのK840 → 快適
自宅はメンブレン → 苦痛

になってきたのでもう我慢出来ないかもしれません。
今まで安物のキーボードしか使ってこなかった私ですが、今ははっきり言えます。
キーボードに金をケチるな、と。

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