【3Dプリント失敗事例解析】冷却ファンが止まるとフィラメントが詰まった
FDM方式の3Dプリンター、特に家庭用の安価な機種を使っていると、ありとあらゆる造形トラブルに見舞われます。
慣れてない頃は、カップ焼きそばの麺みたいなモジャモジャを生成する機械と言っても過言ではありません。
最近はモジャモジャを生成することはめったになくなりましたが、エクストルーダーの冷却ファンが停止したことによる造形不良と言う、今までにないパターンを経験したので共有したいと思います。
発生した現象
使用している3Dプリンター: Ender3 Pro
フィラメント: PLA
3Dプリンターをスタートさせて、1層目が問題なく出来ていることを見届け、その場を離れました。
プリントが完了した頃に戻ってみると、造形失敗してる!
数層プリント後にフィラメントがでなくなった模様。
エクストルーダーの、フィラメントを送るギザギザ(ギヤ)の箇所でフィラメントが削れた痕跡がありました。
この箇所でフィラメントが削れているということは、フィラメント送りの抵抗が大きくなったと推測されます。
例えばノズルが詰まってフィラメントが出れない状態でも、エクストルーダーはお構いなしにフィラメントを送ろうとギザギザを回し続けますので、ここで削れてしまいます。
最終的にはギザギザが引っかかる部分がなくなるまでフィラメントが削られます。
ノズル詰まりを疑い、ノズル交換してみます。
フィラメントを通してみると問題なくノズルから出ました。
心機一転、再度プリントしたら…
同じように失敗しました!
フィラメントを引っこ抜くと、太っているのに気づく
フィラメントがエクストルーダーのギザギザで削られてしまっているので、フィラメントが送れない状態になってしまっています。
なので、フィラメントをエクストルーダーから引っこ抜かなきゃいけません。
ノズルが冷えた状態では抜けないので、少し温めて引っ張りましたが、妙に抵抗が大きいことに気づきました。
抜いたフィラメントを観察してみると、下の画像のような状態。
右側がノズル側です。
画像中央より右側、数cmが太いです。
左側がフィラメント本来の太さ(1.75mm)。
後ほど判明しますが、ファンが止まっていたのが原因でした。
ファンが止まっているのに気づく
2回ほど同様の失敗をして、何が原因だろうと悩んでいたら、エクストルーダーのファンが止まっていることに気づきました。
エクストルーダーには2つのファンが付いていますが、止まっていたのは下画像でいうと正面の大きく写っているファンです。
フィラメントの通り道にアルミ製の放熱器があり、これを冷却するためのファンです。
ちなみにもう一つのファンは吐出されたフィラメント(造形物)を冷却するためのファン。
「このファン、プリント中止まってたっけ?」と隣で稼働している3Dプリンターを見たらファンが回ってます。(Ender3を3台並べて使っています)
ファンが壊れたのかな?と細いマイナスドライバーで突っついたら回り始めました。
突いたら回ったので、完全に壊れているわけではないですが、その後もスタート直後に止まっていることが何度かありました。
一度回り始めると、途中で止まることはないので、とりあえずそのまま使っていますが、異物の付着などにより抵抗が大きくなっている可能性があります。
造形失敗原因の推測
調子の悪いファンはノズルの上についているアルミ製放熱器を冷却していると思われます。
エクストルーダーの構造として、真鍮製のノズルの直上までPTFEチューブ(耐熱性の高い樹脂製チューブ)が通っていて、PTFEチューブ内部をフィラメントが通ります。
ノズル付近のPTFEチューブの外側に金属製の筒(スリーブ)があり、スリーブはアルミ製の放熱器内にあります。
ファンはこの放熱器を冷却する役割ですが、ファンが止まるとどうなるでしょうか?
放熱器、スリーブ、PTFEチューブ、そしてフィラメントまで、ファン稼働時よりも当然温度が高くなります。
それにより、私の想像ですがこうなります。
- PTFEチューブ内を通るフィラメントが熱されて軟化する
- フィラメントが後ろから次々押し出されてくるため圧力が高まる
- 軟化フィラメントが高い圧力によりPTFEチューブ内で太くなる
- PTFEチューブ内で詰まる
- プリント失敗
対策としては、ファンが動いていることをしっかり確認し、放熱器をしっかりと冷却することです。
まとめ
数々の造形失敗パターンを経験しましたが、ファンが止まって造形失敗は初めてです。
あの放熱器もファンも、飾りで付いてるわけじゃなく、ちゃんと意味があったんですね。