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【10万円以下】大型造形できる家庭用FDM式3Dプリンター6選

   

最近では家庭用3Dプリンターも成熟してきて、目新しさはなくなったように思います。
3Dプリンターが問題なく扱えるようになると次は造形可能なサイズに不満が出てくるかもしれません。
3Dプリンターを使っていると「プリントエリアがあとちょっと大きければ分割なしで造形できたのに!」と感じたことは、誰しもあるのではないでしょうか。

というわけで、家庭用として導入しやすい10万円以下で大型の造形物をプリント可能な3Dプリンターの機種紹介や、メリット・デメリットを解説します。
具体的なサイズとしては、1辺 300mm以上を「大型」としたいと思います。

大型造形ができる3Dプリンターの方式はFDM式が有利

現在、家庭用として購入できる3Dプリンターの方式は、主に次の2つです。

  • 光造形 (SLA)
  • 熱溶解積層方式 (FDM)

SLAのほうが高精細で見た目の良い造形物を得られますが、大きなものをプリントしたい場合はFDMのほうが有利です。

というのも、3万円前後の普及価格帯の3Dプリンターでも、SLAとFDMを比較すると、FDM方式のほうが大きなプリントエリアを持っています。
SLA方式は硬化用の液晶のサイズが造形可能なサイズに直結します。
液晶のサイズはある程度決まっているので、造形サイズもおのずと決まってくるのです。

FDM方式はそのような成約がないので、大型化するのも比較的簡単というわけですね。
というわけで、この記事ではFDM機に絞って紹介していきたいと思います。

家庭用3Dプリンターでどの程度のサイズがプリントできる?

人気のEnder3で220×220×250
これを基準として造形エリアが1辺300mmを超えるものをここでは大型造形可能な3Dプリンターとします。

10万円以下で売られている3Dプリンターで現在最も大型の造形がでける機種はおそらく、Kobra Max (Anycubic)じゃないでしょうか。
造形可能なサイズは最大で400×400×450 mmとかなりのもの。

一辺の長さではEnder3の2倍とまではいきませんが、体積で考えると6倍近く!

造形エリアにギチギチに造形したとすると、Ender3の6倍の量のフィラメントを消費するってことから、その大きさが伝わるでしょうか。

大型造形可能な3Dプリンターのメリット

大型造形可能な3Dプリンターのメリットとして、次のようなことが考えられます。

大きな造形物がプリントできる

大型造形が可能な3Dプリンターのメリットは、そのまんまですが「大きなものが3Dプリント出来る」ことです。

通常サイズの機種だと1辺が200mm程度しか出来なかったのが、400mm近い大きさでプリント出来る可能性があります。

分割数を減らせる可能性がある

今まで通常サイズの3Dプリンターで大きい造形物をプリントするとき、分割してプリントして、後から接着するなどして組み立てていた場合も、分割数を減らしたり、一度でプリント出来たりするようになります。

小さなものを大量に同時プリントできる

3Dプリンターの使い方として、小さい部品をベッド上に同時にプリントすることがあります。
造形エリアが広いと、よりたくさん並べることができるので有利です。

ただ、うまくプリント出来れば効率的ですが、3Dプリントは失敗することもあるため、あまり並べすぎないほうが結果的に早い場合もあって悩みどころです。

ちなみFDM方式の場合はたくさん並べても、トータルのプリント時間はそんなに変わりません。
プリント済の造形物の取り外しと次のプリントのスタート操作の回数が減る分、効率的になるって話です

大型造形可能な3Dプリンターのデメリット

逆に、大型3Dプリンターのデメリットはなんでしょうか?

広い設置場所が必要

大型の3Dプリンターは一般的なサイズよりも広い設置場所が必要になります。
特に注意したいのが、前後方向のスペース。
エンクロージャーのない開放型の3Dプリンターの多くは前後方向動くY軸として、ベッド(テーブル)ごと前後に動く構造になっています。

この前後の動きは結構大きく、背面のスペースが不足すると稼動時に後ろの壁に当たる可能性もあります。
前後方向の造形エリアが400mmの場合、ノズルを中心に前400mm、後ろ400mm動くことになり、それだけで最低800mmの設置スペースが必要です。
背面方向にケーブル等が飛び出していたら、1m近くの接地スペースが必要になると思っていたほうが良いでしょう。

設置場所が限られている場合は、購入前にサイズをよく確認しておきましょう。

材料がたくさん必要

大きい造形物を3Dプリントした場合、当然ですが材料がたくさん必要です。
例えば1辺が1cmと2cmの立方体を比べてみた場合の体積では、
1辺が1cm : 1 × 1 × 1 = 1 [cm^3]
1辺が2cm : 2 × 2 × 2 = 8 [cm^3]
と、8倍になります。

つまり、1辺が2倍になると、使用する材料は8倍となり、思ってたよりも材料が早く減る!ってことになりかねません。

プリント時間もたくさん必要

FDM方式の場合、造形物の大きさ(体積)がおおむね造形時間に比例します。
さっきの例で言えば、1辺1cmと2cmの立方体だと、2cmのほうが約8倍の造形時間がかかるということです。

大型の3Dプリンターの大きな造形エリアいっぱいにプリントしたとすると、造形時間が100時間を超えることもあるでしょう。

失敗したときのダメージが大きい

材料もプリント時間もたくさん必要になるので、失敗したときの金銭的、時間的、精神的ダメージも大きなものになります。

大型造形ができる3Dプリンター6機種紹介

1辺300mm以上のサイズがプリントできる3Dプリンターを、今回は6機種紹介したいと思います。
こういうのは一覧でスペックが比較できたら分かりやすいので、まとめてみました。

機種名 メーカー 価格 造形サイズ オート
レベリング
デュアル
Z軸
フィラメント
センサー
ベッド エクストルーダー方式 カラー
タッチスクリーン
備考
Kobra Max Anycubic 8万円台 400×400×450 ガラス ボーデン式
Ender 3 Max Neo Creality 5万円台 300×300×320 ガラス ボーデン式
Ender3 S1 Plus Creality 7万円台 300×300×300 マグネットシート ダイレクト
X-max QIDI TECH 12万円台 300×250×300 マグネットシート ダイレクト 密閉型エンクロージャー
高温押出機付属(PC、ナイロン、炭素繊維),300℃
F&T 3万円台 310×310×410 ガラス ダイレクト
A5S JGAURORA 4万円台 305×305×320 ? ガラス ? 家電っぽい見た目

10万円以下(一部超えている機種もありますが)の3Dプリンターを集めてみましたが、値段は3万円台~12万円台と幅がありますね。
基本的に値段が高いほど機能が増えます。

では、個別に見ていきましょう。

Kobra Max [Anycubic]

10万円以下で購入できる3Dプリンターでは、最も造形サイズが大きいと思われるのが、この「Kobra Max」。
最大400×400×450 mmと、かなり大型のものが3Dプリントできます。
ベッドの高さを自動で検知して最適なノズル高さでプリントできる「オートレベリング」に、フィラメント切れによる失敗を防げる「フィラメントセンサー」など、必要な機能は揃っています。

価格 8万円台
造形サイズ 400×400×450
オートレベリング
デュアルZ軸
フィラメントセンサー
ベッド ガラス
エクストルーダー方式 ボーデン式
カラータッチスクリーン

Ender 3 Max Neo [Creality]

造形可能サイズが300×300×320 mmと、Kobra Maxより一回り小さいですが、価格は3万円安くなっています。
オートレベリングにフィラメントセンサーと必要充実な機能が搭載されています。

Ender3系全般に言えることですが、Y軸(ベッドが前後に動くとこ)がレール1本なので、若干剛性的に不利かなと思います。
Kobra Maxの画像と見比べれば分かると思いますが、あちらは2本、こちらは1本です。
造形結果にはそれほど影響はない可能性はあります。

価格 5万円台
造形サイズ 300×300×320
オートレベリング
デュアルZ軸
フィラメントセンサー
ベッド ガラス
エクストルーダー方式 ボーデン式
カラータッチスクリーン

Ender3 S1 Plus [Creality]

Ender3 S1 Plusの造形可能サイズが300×300×300 mm。
同じくCreality製のEnder3 Max Neoと近い造形サイズですが一番の違いはエクストルーダーがダイレクト式なことでしょうか。

ダイレクト式とは、フィラメント送りのモーターがノズルのすぐ近くに設置されているタイプのこと。
離れて設定されていてチューブでノズルにつながっているタイプは「ボーデン式」と言います。

ダイレクト式のメリットは、ノズルのすぐ近くでフィラメントを押し出すため正確にコントロールされるのと、TPUのようなゴムライクの柔らかいフィラメントに対応可能な点。
私はEnder3 Proのエクストルーダーをダイレクト式に改造して使っていますが、どうせ改造するなら最初からダイレクト式の機種を選部のが吉ですね。

価格 7万円台
造形サイズ 300×300×300
オートレベリング
デュアルZ軸
フィラメントセンサー
ベッド マグネットシート
エクストルーダー方式 ダイレクト
カラータッチスクリーン

X-max [QIDI TECH]

造形可能サイズが300×250×300 mmと、今回紹介する中では一番造形サイズが小さいです。
しかし特筆すべきは密閉型のエンクロージャーを備えている点。

ABSなど収縮しやすい材質のフィラメントは、周囲温度の低下により造形物が反ってしまい失敗することがあります。
エンクロージャーありの機種であれば、このような失敗の確率を下げることができます。

また、PCやナイロンのフィラメントに対応する高温押出機も付属。
いろいろな素材を試したいなら、チェックしておきたい1台です。

価格 12万円台
造形サイズ 300×250×300
オートレベリング
デュアルZ軸
フィラメントセンサー
ベッド マグネットシート
エクストルーダー方式 ダイレクト
カラータッチスクリーン
備考 密閉型エンクロージャー
高温押出機付属(PC、ナイロン、炭素繊維),300℃

F&T

造形可能サイズが310×310×410 mmと十分な大きさを備えていながら、3万円台と妙に安いのがこちら。
オートレベリングや、液晶のタッチスクリーンなどの機能がない分安くなっているのかもしれません。

タッチスクリーンは造形自体に直接関係ありませんし、オートレベリングもなくても手動調整で問題なくプリント可能です。
安くて大きい造形サイズが必要であれば選択肢に入れていいと思います。

価格 3万円台
造形サイズ 310×310×410
オートレベリング
デュアルZ軸
フィラメントセンサー
ベッド ガラス
エクストルーダー方式 ダイレクト
カラータッチスクリーン

A5S [JGAURORA]

A5Sは造形可能サイズが305×305×320。
特徴的なのはその見た目です。
ほかの3Dプリンターはアルミの押出材をそのままフレームとして使っている見た目ですが、こちらはちょっと家電っぽい見た目になっています。
このスッキリした見た目が気に入ればアリと思います。

価格 4万円台
造形サイズ 305×305×320
オートレベリング
デュアルZ軸 ?
フィラメントセンサー
ベッド ガラス
エクストルーダー方式 ?
カラータッチスクリーン
備考 家電っぽい見た目

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