3Dプリンターの積層ピッチとは?最適な積層ピッチの選択方法解説
FDM方式にしろ光造形にしろ、3Dプリンターで造形するときの積層ピッチの選択には悩みますよね。
小さくすれば見栄えは良くなりますが、造形時間が長くなるし…
そんな積層ピッチについての解説と、積層ピッチの選択方法を提案したいと思います。
この記事は主にFDM形式での話となります。
この記事の目次
FDM形式3Dプリンターの最適な積層ピッチの選択方法
「積層ピッチとは?」みたいな解説の前に、積層ピッチ選択の結論的なことを書いておきます。
- 機能重視の部品であれば0.25 mm前後の積層ピッチを選択。
- 見た目を重視する必要があれば0.1 mm前後の積層ピッチを選択する。
- なだらかな傾斜の天頂付近の積層跡が気になるなら、可変積層ピッチでの造形も検討する。
- 造形時間が許すのであれば、少し小さめの積層ピッチも検討する
わたしの場合は、主にこのような指針で積層ピッチを決めています。
積層ピッチとは
世の中には数多くの種類の3Dプリンターがありますが、ほとんどが1層ずつ層を重ねて形を作ります。(= 積層)
その1層ずつの厚さが「積層ピッチ」となります。
「レイヤー高さ」や「レイヤー厚」と呼んだりもします。
一般的なFDM形式3Dプリンターだと0.05 ~ 0.3 mm程度になります。
光造形だと25 μm ~ 100 μm、つまり0.025 ~ 0.1 mmと言ったところでしょうか。
光造形のほうが小さな積層ピッチが可能な上、液状の樹脂を硬化させる性質上、積層跡が目立ちにくくなっています。
積層ピッチが変わると、どのような影響があるかというと、主に造形時間や造形物の見栄えに違いがでてきます。
積層ピッチの大小による見た目の違い
3Dプリント品の積層ピッチが異なると、造形物の見た目も変わってきます。
積層ピッチが小さいほど、つまり0.3 mmよりも0.1 mmの方が積層跡の目立たない高品位な仕上がりとなります。
FDM方式の3Dプリンターだと、積層ピッチ0.3 mmだと結構荒い感じですが、0.1 mmの積層ピッチだとかなり目立ちにくくなります。
ドット絵も、ドットが小さくなるほど滑らかになるのと同じ原理です。
積層ピッチによる造形時間の違い
見た目が良くなるのなら、積層ピッチは小さいほど良いの?って思いますよね。
ところが、積層ピッチを小さくするデメリットとして、造形時間が非常に長くなってしまうんです。
1層をプリントする時間は積層ピッチが0.3 mmでも0.1 mmでもあまり変わりませんが、積層ピッチが1/3になると3倍の数の層をプリントしなきゃいけません。
単純に考えて、積層ピッチ0.1 mmは0.3 mmの3倍の造形時間がかかると言う事です。
積層ピッチを選択するときは、造形時間と仕上がりのトレードオフとなります。
使用する材料(フィラメント)の量はあまり変わらない
同じ形状の造形物を3Dプリントする場合、積層ピッチ0.1 mmでも0.3 mmでも、使用する材料(フィラメント)の量はあまり変わりません。
出来上がった造形物のサイズが同じなんだから、消費量が同じなのは当たり前ですよね。
積層数が3倍になっても、一層の厚さが1/3なら、トータルは同じということです。
稼働時間は3倍近くになるので、電気代は3倍かかるかもしれませんけど。
積層ピッチはどこまで小さく(大きく)できる?
FDM方式の3Dプリンターの積層ピッチは、0.05 ~ 0.3mmくらいが一般的です。
積層ピッチの小さい側は、
3Dプリンターにデータを受け渡すGコードファイルは、スライサーと呼ばれるソフトで作成します。
スライサーで積層ピッチを設定しますが、例えば「Ultimaker CURA」というソフトだと、0.01mmみたいな非常に小さい数値でも設定自体は可能。
でも、3Dプリンターがそんな小さい積層ピッチに追随して正確に動くかは別問題となります。
積層方向は3DプリンターのZ軸で駆動しますが、ステッピングモーターが1回転200ステップ、Z軸駆動のネジのピッチが2mmとすると、1ステップ0.01mm動く計算になります。
機械的にも0.01mm単位で動かせるポテンシャルはありますし、Gコードで積層ピッチ0.01mmの司令があればその通りに動こうとはします。
しかし安価な3Dプリンターの場合、各部のたわみやベルトの伸び、摩擦により、実際にはそこまで正確に動かないと思います。
なので、最小で0.05mmくらいが妥当ってことになりますね。
逆に積層ピッチが大きい側はどこまで可能なのでしょうか?
際限なく大きくすることは出来なくて、ノズル径の75%くらいが限度と言われています。
0.4mmのノズル径が標準の場合が多いので、積層ピッチは大きくても0.3mmくらいまでが無難ですね。
実際にプリントした感覚でも、0.3mmなら特に問題を感じません。
もっと大きな積層ピッチを指定することももちろんできますが、フィラメントを空中に放出してる感じになり、うまくプリントできません。
0.8mmなど、径の大きいも市販されているので、そういうのを使えば0.6mmの積層ピッチも可能になります。
積層跡が目立ちやすい形状とは?
積層ピッチが大きいと問題になるのが、積層跡が等高線のように目立って見た目が悪くなることです。
これは形状によっては特に目立つので、形状次第では大きな積層ピッチでも目立たない可能性があります。
どういうところで目立つかというと、球体をプリントしたとして、天頂付近と底付近です。
ベッドに対してなだらかな斜面になている箇所は、段々畑のように積層跡が目立ちます。
一方、球体の側面は、積層ピッチが0.3mmのように荒くても、積層ピッチはもちろん目視出来ますが、そんなに汚い感じにはなりません。(汚く見えるかどうかは個人の主観となりますが)
なので、ベッドに対してなだらかな斜面となるような形状を避けたり、造形する姿勢を工夫したりすると良い結果となります。
上面を斜面にせずに完全に水平な面にしたり、円柱をプリントするなら寝かせるんじゃなく立てて造形する、等です。
可変積層ピッチという選択肢
スライサーの「CURA」には形状により積層ピッチを可変する設定があります。
さっきの例だと、積層跡が目立ちやすい球体の天頂付近は積層ピッチを小さくして、それ以外の目立たない部分は積層ピッチを大きくし、要所の品質を維持しつつ全体の造形時間を短く出来ます。
設定項目の名前がちょっとわかりにくくて「適応レイヤーの使用」にチェックを入れれば使用可能。
他のスライサーのことは詳しくないですが、似たような機能はあるかもしれません。
まとめ
というわけで、積層ピッチを決定する指針の例としては下記となります。
- 機能重視の部品であれば0.25 mm前後の積層ピッチを選択。
- 見た目を重視する必要があれば0.1 mm前後の積層ピッチを選択する。
- なだらかな傾斜の天頂付近の積層跡が気になるなら、可変積層ピッチでの造形も検討する。
- 造形時間が許すのであれば、少し小さめの積層ピッチも検討する
造形時間や使用目的と相談しながら決めていきましょう。